dnjiro’s 9VAe blog

誰でもアニメが作れる無料ソフト9VAeきゅうべえ開発者のブログ

ひとコマアニメーションはアニメーションの革命か?!

ひとコマアニメーションは、2018年キッズプラザ大阪コンピュータ工房のワークショップでうまれた言葉だ。どんなものか体験できる「うるさいえほん」がこちら

 

キッズプラザ大阪では、フリーソフト PEAS motch! を使ったアニメ制作ワークショップが行われ、 3か月で、3000点近いアニメ作品が制作された。その期間中の3月3日、あるボランティアスタッフTが「夢のある「ひとコマ」マンガです。」と感想欄に書いた。それをプランナーSが「ひとコマでアニメーション」とは面白いとミーティングで紹介した。アプリを開発した大和団次郎はこの言葉に驚いた。

 

アニメーションは何コマも絵を書く必要があり、「2コマアニメーション」は存在するが、「ひとコマアニメーション」は存在しないと思われる。ところが、線を書く途中をアニメーションにすれば1コマでもアニメができる。いわれてみれば当たり前だが、実は、画期的なアニメーションだとわかってきた。下がキッズプラザの指導員が作成したひとコマアニメーションのサンプルだ。

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1.ひとコマアニメーションは制作コストが圧倒的に低い

今まで手軽に作れるアニメーションといえば、任天堂DSの「うごくメモ帳」のような、絵を何枚か書いて再生する、というものだった。線を描くだけなので相当簡単なのだが、それでも、数枚絵を描く必要がある。ところが、

 

  • ひとコマアニメーションは、1コマ描くだけである。

 

これは制作コストが静止画と同じということだ。WebページやPowerPoint など、 静止画はいろんな場面で使われている。アニメーションを作ったことがない人でも、静止画を作ったことはあるだろう。

 

  • ひとコマアニメーションは、制作コストが静止画と同じ。

 

例を示そう。下は、 PEAS motch! 画面の説明図で、上はひとコマアニメーション、下が静止画である。

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 上のアニメーションは、下の静止画を作成したあと、ボタンを1つ押すだけ。文字や矢印にアニメーション効果が自動的に追加される。アニメ化の時間は0.1秒。制作コストが同じなら、どちらを使いたいだろうか? データサイズも小さい。上のアニメは62KB。変化部分だけ記録するので静止画よりすこし大きい程度である。

 

今までのアニメーションは何コマか作成するので、静止画より必ず制作コストが高くなるわけだが、ひとコマアニメーションは、同じなのである。

 

  • ひとコマアニメーションは静止画より優れている。

 

ひとコマアニメーションが静止画よりすぐれていることは、心理学的に検証されている。ひとコマアニメーションは、米国ではホワイトボードアニメーションといい、このような線を順番に書いていくアニメーションは単純な動画よりも一目をひき、理解度も高いことが実証されている。その制作コストが静止画と同じなら、つかわない理由はない。世の中の多くの静止画が、ひとコマアニメーションに置き換えられてもおかしくない。相当インパクトがあることがわかるだろう。

 

 

2.ひとコマアニメーションの定義

ひとコマアニメーションを次のように定義した。

  • 1コマのデータで作られるコンピュータアニメーション
  • 書いた順番に線や文字が書かれていく

さらに、次のような機能があってもよい。

  • 消しゴムがあり、一部を消して書き換えることができる。その書き換えも再生時に再現される。
  • 背景に絵や写真が入れられる。
  • 制作過程の単なる録画ではなく、線の形や色、再生時間、再生の順番など、後から自由に修正できる。

 

ひとコマアニメーションらしきアニメーションは昔からあった。

  • 絵描き歌
  • 絵を描く漫談
  • ホワイトボードアニメーション
  • 絵の制作過程を録画した動画

 

 

3.ひとコマアニメーションはアニメーションか?

上の例で、「絵の制作過程を録画した動画」はアニメーションと呼ぶには抵抗があるかもしれない。絵をかく様子を撮影した実写だからだ。

 

これについて、静止画制作が目的で途中の様子を撮影したものなら単なる動画かもしれないが、アニメーション制作を目的に作られたもので、書いた時間と異なる時間で再生されたら、アニメーションだと考える。

 

アニメーションは、従来の2次元アニメーション(セルアニメ人形アニメ・・)とコンピュータグラフィックスで作成する3次元アニメーションに分類されていた。ひとコマアニメーションはそのどちらにも属さない新しいジャンルと考えられる。

 

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ひとコマアニメーションの絵は、従来のアニメーションのコマとは異なった作り方になりそうだ。車のアニメーションを例に説明してみる。

 

 

従来のアニメーションでは、1コマめに車を描いたあと、次のコマでは、その車を少し移動、変化させ、車の動きを表現するだろう。

 

ひとコマアニメーションは、違う考え方をすべきだ。

 

ひとコマアニメーションでは、車を描いたあと、その余白に、車以外の情報を書き加えていく。どんな人が乗っているのか、何を運んでいるのか、どんな道なのか、どこに行くのか、これから何が起こるのか、そういった情報を順番に追加していく。

 

ひとコマアニメーションを再生すると、その情報が徐々にわかっていき、最後に全体が明らかになる。といったストーリーをもった構成がひとこまアニメーションらしいと考える。車だけの動きよりも、車のいる場面全体を描くほうがおもしろいだろう。

 

別の言葉で言えば、ひとコマアニメーションは、複雑な事件を1枚の絵で説明する情報整理の方法と考える。ひとコマアニメーションは長編アニメを作る方法ではない。長いストーリーを1コマにまとめる表現で、ショートアニメーションの技法のひとつだろう。これは短い空き時間でスマートフォンをみる現代人向きのアニメーションといえる。

 

何コマも描いて動きを表現する今までのアニメーションの作り方ではなく、一枚の絵にどんな内容を含めるか、ストーリーを考えて作ったほうが魅力的なひとコマアニメーションになるだろう。

 

ひとコマアニメーションは今までのアニメーションとはジャンルの異なるコンピュータアニメーションである。

 

4.黒板書きはひとコマアニメーションである

情報を1枚の絵に順番に表現していく方法がひとコマアニメーションだと考えると、学校の授業で先生が黒板に絵をかいていく様子はひとコマアニメーションだろう。実際、米国ではこれをホワイトボードアニメーションと呼んでおり、通常の動画よりも、説明をわかりやすく伝えられる動画として注目されている。

 

黒板書きがひとコマアニメーションなら、ノートの手書き、スケッチなど、ペンや筆で書くものはすべてひとコマアニメーションになるはずだ。以下のグラフィックレコーディングもひとコマアニメにするとよりわかりやすくなりそうだ。

 

グラフィックレコーディングをやってみました!

 

 5.Draw My Life はひとコマアニメーションで簡単に作れる

ホワイトボードに自分の人生を書いていく、Draw My Life 動画は、ひとコマアニメーションである。自分の人生を紹介した動画は、Youtube で評判になっており、自己ブランディング手法として注目されている。2013年米国ではじまったらしい。

 

自分の人生を描く、Draw my lifeの魅力 | UPLOAD

 

このように、ひとコマアニメーションは昔からあった。それなら  PEAS motch! のひとコマアニメーションはどこが新しいのだろうか。

 

従来の黒板やノートやスケッチは、書き終わったあと、静止画になってしまう。それを動画にするため、ホワイトボードアニメーションや Draw My lifeではビデオカメラを使い、動画編集によってアニメーションを作っていた。そのため、制作には結構手間がかかっていた。

 

ひとコマアニメーションは違う。静止画を描いた時点でアニメが完成している。あとから、いつでも再生、編集できる。これはコンピュータアニメーションであるからだ。その点が違う。アニメーション自体は新しくないが、アニメーションの記録、再生、編集方法が異なり、そのため制作コストが全く違う。

 

6.アニメーションをベクトルで記録する

黒板書きを記録、再生する方法が、今までは、動画撮影しかなかった。米国のホワイトボードアニメーションの制作では、ホワイトボードに書く様子を動画に撮影し、動画編集を行って仕上げていた。 PEAS motch! は、線のデータをベクトル(図形情報)で記録し、線がのびていく様子をその場で計算して再生する。そのため、動画編集を行う必要がない。 「うるさいえほん」JavaScriptで記述されたひとコマアニメ作成Webアプリである。このデータは、ONEP(One Picture)というテキストフォーマットで座標データが記録される。

 

7.手書きメモはひとコマアニメーションに拡張される

今、スマホで写真を撮影し、その上に手書きできるアプリがある。たとえば、

MetaMoJi Noteでできること | あらゆるタブレット端末で使える手書きノートアプリ MetaMoJi Note

など、多くは静止画だが、当然アニメーションになったほうが表現力が高くなり、より楽しくなる。写真上の手書きメモは、ひとコマアニメーションにかわっていくだろう。

 

 スマホアプリ picsart

写真加工アプリで有名な、picsart は、ひとコマアニメーションが作成できる。ただ、録画ボタンを押して絵を書く様子を記録するという作り方で、あとからアニメを編集することができない。本格的な1コマアニメーションを制作するには、PEAS motch! のように、入力した線の形や色や配置を自由に変更できる機能がほしくなるだろう。

 

 

スマホアプリ Gocco Doodle!(らくがキッズ)

GooglePlay2014年上半期ベストアプリに選ばれたフリーソフト「らくがキッズ」は、絵を描く過程を再生する機能がついている。絵はベクトル情報で記録しているようで、ひとコマアニメーションといってよい。再生ボタンをおすとのびていく線があり、アニメーションのような特殊効果をつくることができる。しかし、絵を描く順番を利用してアニメーションを作るという考えはもっていないようだ。

 

 

同じようなアプリには、以下のようなものがある。

 

 

8.ひとコマアニメーションのデータフォーマット

ひとコマアニメーションは、1画面の図形データがあればよいので、SVGのような既存のベクトルフォーマットがそのまま使える。それを読み込んで、再生するライブラリがあれば、ひとコマアニメーションが実現できる。

 

一方、再生時間を細かくコントロールしたければ、再生スピードの情報の追加が必要になる。再生ライブラリを外部からコントロールするといった形になるだろう。

 

 PEAS motch! は、9VAEきゅうべえアニメ研究所が開発した、9VAeLib ライブラリを用いている。9VAeLib は、SVGベースの図形データを読み込んで時間情報を追加し、アニメーションにして再生できる。 「うるさいえほん」JavaScriptで記述されたひとコマアニメ作成Webアプリである。このデータは、SVGを簡略化した「ONEP」というテキストフォーマットで座標データが記録されている。

 

JavaScript で実現した「ひとコマアニメーション」

ひとコマアニメーションは線のデータを記録、再生するだけなので、比較的容易に、JavaScriptで表現できる。静止画を扱ういろんなサイトに「ひとコマアニメーション」を組み込んでいき、アニメーションの活用範囲を広げていくことが考えられるだろう。

 

9.ひとコマアニメーションに描く内容

 ここでは、ひとコマアニメーションに適した絵は、どんな絵かを考えてみたい。ひとコマアニメーションは、絵に対して、新しい情報をどんどん追加していく作り方が考えられるが、どんな情報を追加していくのがよいだろうか。

 

  • 情景描写:これがどんな場面なのかを、順番に説明していく
  • 効果:光とか爆発とか波線とか色をかえて線を書き加えていくだけでも楽しい
  • 増えていく:同じ種類のものが増えていく
  • 場面転換:画面をまっくろにぬるなど
  • ・・・・・

 

 塗るか消しゴムで消すか2つの方法

  • 線を書き加える
  • 線で塗ってから消しゴムで一部を消して形をつくる

 

背景写真に書き加えていく

  • 背景ページに写真をいれ、写真をなぞって線を加えていく
  • 逆にスケッチ画から写真になるという表現もおもしろい

 

複数の人で順番に絵を付け加えていくひとコマ寄せ書きアニメーション

  • 順番に書く人が交代して絵を描き加えていく。新しい要素が追加されていくため、再生したとき、絵の趣旨が意外な方向に転換していくおもしろさがでてくる。NT京都2018 でやってみたが、これはおもしろそうだ。下のアニメはNT京都2018でその場にいた3名の方に書いてもらった。最初の水色の静止画に新しい情報が追加されている。時間を制限すると緊張感が出ておもしろそうだ。

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順番にひとコマアニメーションを書いていく手法は初対面の人のコミュニケーションツールとしてもつかえそうだ。グループでひとコマアニメーションを作成し、みんなでアニメーションを見るという運営が考えられる。ちなみに、太さの変わる線は、ワコムペンタブレットで書いている。「続きをどうぞ」とペンを渡すと書いてくれた。

 

ネタアニメもできそうだ。Youtube動画が簡単に作成できるし、ひとコマアニメーション作家がうまれそうだ。Draw My Life 動画の作り方も多いに参考になる。

 

10.「ひとコマアニメーション」という言葉の使い方

 Web制作現場では、画面を設計するときに、ここに写真を入れ、ここにイラストをいれて・・・といった検討が行われているだろう。そこには「イラスト」と同じコストで作れ、ホワイトボードアニメーションと同じ効果をもつ「ひとコマアニメーション」も検討に入れるとよいだろう。

 

クライアントから、トップの部分には一目をひくために「アニメーション」を入れたいと要望があるかもしれない。このとき「ひとコマアニメーション」でもよいですか?と提案できるだろう。それが認められれば、静止画と同じコストで作れることになる。

 

「ひとコマアニメーション」は、「静止画と同じコストで制作できること」が重要である。「ひとコマアニメーション」と同じアニメーションはいろんな方法で作ることができる。たとえば、絵を書くようすをビデオ撮影し、あとから動画編集して作ることができる。この場合、絵を書いたあと、動画編集する手間が余分にかかり、制作コストは静止画と同じではない。これは「ホワイトボードアニメーション」と呼べばよい。PEAS motch! の上で同じ絵を書けば、アニメにするのは「鉛筆ボタン」を押すだけである。そのようなアニメーションを「ひとコマアニメーション」として区別するとよい。

 

「ひとコマアニメーション」は従来のアニメーションとは別の新しいジャンルのアニメーションになるだろう。ひとコマアニメーションを制作する人はアニメータではなく、静止画を書くイラストレータが主体になるだろう。

 

 

11.「ひとコマアニメーション」はアニメーションデジタル化の第一歩

日本のアニメーション制作について、デジタル化が遅れていることが問題になっている。これは、アニメーション制作の基本が紙の上に何枚もコマを書いていくことから始まっているからだ。紙の上に絵を書いてスキャナーで入力してからデジタル作業を行うと、最初からデジタル入力するより手間がかかり、国際競争力が低下するのではと危惧されているらしい。 

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000431.pdf

 

それなら「ひとコマアニメーション」から始めるとよいのではないか。ひとコマアニメーションはデジタル入力によって制作コストが静止画と同じになる。これでアニメーションに興味をもち、本来のアニメーションに発展していくという学習過程をたどれば、自然にアニメーションがデジタル化されていくだろう。

 

12.キッズプラザ大阪にひとコマアニメーション制作コーナー設置

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2019年7月にキッズプラザ大阪の3階デジタル体験広場アクアに、ひとコマアニメーション制作端末が5台設置され、1日150〜200本のアニメが作られている。制作しているのは、4歳児から小学生の子供達だ。(1)1枚絵を描いて (2)アニメーションボタンを押し (3) アップロードボタンを押せば、大画面で1コマアニメーションが再生される。使われているソフト「PEAS motch! one」はここからダウンロードできる。PEAS motch アンドロイド版はこちら

DXライブラリをつかって、Android版9VAeきゅうべえを作りはじめた

PEAS motch!がひと段落してきたので、9VAeきゅうべえアンドロイド版の作成を再開。

 

開発環境は、Visual Studio、DXライブラリ置き場にサンプルがあり、それをそのままビルドすると、ちゃんと動いたので、できそうな気がしてきた。

DXライブラリ置き場 HOME

 

DXライブラリは、構造がすごく簡単。イベントループは自分でもつようだ。タッチイベント(マウスイベント)は、マウスボタンの状態を取得して自分で作成する。

 

 

画面表示は、9VAeのデザイン画像から矩形転送で行う。画像は assets の中にいれる。

DXライブラリ置き場 Androidアプリ開発の注意点など

 

これで、以下のような画面表示ができるようになった。

あとは、少しずつ関数を増やしていくだけだ。アンドロイド版できそう。

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PEAS motch!とビジュアルプログラミングとプログラミング学習

キッズプラザ大阪でのワークショップ用に、PEAS motch!を開発した。

このソフトは、小学校低学年や幼稚園の子供たちでも、楽しくコンピュータを使って創作活動ができるように、キッズプラザの担当者といっしょに作り上げたソフトだ。

 

このソフトがプログラミング学習の役に立つとよいと思い、このジャンルでどういう位置づけになるのか、調べていると、どうも、ビジュアルプログラミングと関係ありそうなことがわかってきた。

 

ビジュアルプログラミングは、スクラッチのようなブロックを組み立てるもののことをいうと思いがちだが、スクラッチはテキストをブロックで置き換えただけなので、テキスト言語に近い。ビジュアルプログラミングはもっと広い概念で、テキストでは考えられない自由な発想でプログラムを考えてみようというものらしい。

 

その代表が「ビスケット」で、これがつくられたときは、結構、いろんな研究があったらしい。ところが、ビスケット以外は下火になって、ブロック型言語ばっかりになってしまった。

 

ブロック型言語は、テキスト言語よりも覚えやすいので、プログラム学習に適している。ところが、小学校低学年や幼稚園児には、まだむずかしい。それで「アンプラグド」というコンピュータを使わない方法が提唱されている。

 

「アンプラグド」はもともとは、コンピュータに興味をもった人がコンピュータの中身を勉強するために考えられたもので、本来コンピュータをよく知らない人にコンピュータを教えるためのものではない。コンピュータを知らずに「アンプラグド」をやると、コンピュータとは思わず、単なるゲームで終わってしまうおそれがある。

 

この問題を解決するのに、ビジュアルプログラミングが役にたちそうだ。そういえば、過去、大ヒットした「インクレジブルマシン」もビジュアルプログラミングなのではないか。スクラッチのようなブロックではなくて、ねずみとか、チーズとか、風船とか、画面上にいろんなものがおいてあって、うまくその配置をかえると、ねずみはチーズに向かって走っていく、風船は上にのぼっていく、それをうまく組み合わせて課題を解決するというものだった。

 

PEAS motch! が、インクレジブルマシンなみのプログラム要素をもっているとは思えないが、それでも、絵を書く順番でアニメーションができる。太い白い線で絵を消すことができ、絵を消して、また描くといったことを繰り返せば、ものを動かしていくことができる。といった、いくつかのルールがあり、それを利用して、自分の考えたとおりのアニメーションを作る。といった学習ができる。これは、現在のレベルであり、今後、もっと楽しいプログラミング要素を付け加えていけるかもしれない。ちなみに、PEAS motch!には「すすんだメニュー」というのが背後に隠れており、そこにすすむと、ループ、サブルーチン、グラフを用いた動きの制御、再起呼び出しといったプログラム要素が使える。

 

ブロック型言語はだいぶ充実してきた。小学校高学年はこれでよいと思うので、これからは、ビジュアルプログラミングに力をいれて、低学年、幼稚園児でも創造活動ができるコンピュータアプリを開発し、アンプラグドをつかわなくてもすむ状況にしていく必要があるのではないだろうか。

 

ラズベリーパイ版 PEAS motch! 開発開始

ラズベリーパイ版 PEAS motch! の開発を始めることにした。

PEAS motch! は、9VAeきゅうべえをベースに開発しているので、ラズベリーパイ版もすぐできそうだ。

 

特長は、ラズベリーパイ用、480x320 ペンタッチディスプレイに収まること。

ラズベリーパイ色のかっこいい画面デザインがあがってきたので、そこに、9VAeきゅうべえの各機能をわりあてていく作業を行う。

キッズプラザ大阪「1コマアニメーションワークショップ」平日版、レポート

キッズプラザ大阪、コンピュータ工房で、1/25から3/31まで、「へ・ん・し・んアニメーション」というタイトルで、PEAS motch! を使った1コマアニメーションを作成するワークショップを行っている。土日祝日は、1回40分の入れ替え制で、平日は自由入場となっている。ここでは、ワークショップが始まった1週間後の平日の様子をレポートする。

ようこそキッズプラザ大阪へ 〜遊んで学べるこどものための博物館〜

 

1コマアニメーションとは

米国では、ホワイトボードアニメーションと呼ばれ、動画の注目度を高める手法として注目されている。

アメリカで爆発的な人気!ホワイトボードアニメーション5つの動画実例 | MOBERCIAL

 

1コマアニメーションでワークショップ機材を説明するとこんな感じ

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ワークショップ時間、人数

  • 平日は自由入退出で行われている。参加者がばらばらくるので、全員まとめて説明することができず、操作方法を一人ずつ短い時間で説明できないとなりたたない。Scratchなどのワークショップでは子供一人にメンターひとりついてブロックの使い方などをサポートするが、指導者1名、ボランティアスタッフ1名では難しい。その点、PEAS motch!は、お絵かきソフトと同じなので、2分程度の説明で終わり、あとは各自が熱心に絵を描いていた。最初の名前、年齢、性別の入力は、ボランティアスタッフが手伝っていたが、そのあと手伝う場面はなかった。

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    PEAS motch!の使い方
  • 参加者は海外(主に中国)が多かった。午前中は子供7名、大人9名(子2+親2(海外) 、子2+親2(国内)、大人2(海外)、子1+親1(海外)、幼稚園2+親2(国内))
  • 午後は、子供25名、大人12名(子1+親2(海外 幼児)、子2(海外)、子1+親1(海外)、子2+親2(海外)、子2(海外)、子1+親1(海外)、子1+親1(国内)、子1(海外)、子1+親1(海外)、子1+親1(海外)、子1+親1(国内)、子1+親1(海外)、子1+親1(国内))
  • 制作時間は自由。30分程度続けていた人もおれば、10分程度で退出した人もいた。もう一度やりに来たリピーターが2組いた。

ワークショップ内容

  • 内容は、日曜日版レポートと同じ

    http://dnjiro.hatenablog.com/entry/2018/02/04/155245

  • 各自、ばらばらに作品が完成するので、その都度、共有サーバーに保存し、プロジェクタで上映していた。データの保存方法がすばらしかったが、その方法と作品上映方法については、日曜日版レポートにまとめた。

プログラミング学習観点での感想

  • まず幼稚園児が PEAS motch! をどう理解しているか観察。(1)自分がアニメーションを作成しており、前のプロジェクタで上映することはすぐ理解できる。(2)新しくページを作る機能をすぐマスターし、自分が何枚作っているか理解。自分の作品が保存ボタンの押し忘れで上映されない場合に不満を述べるなど、コンピュータを使ってアニメーション制作している感覚は持っている。
  • 画面にぐちゃぐちゃな線を引くだけでも、アニメーションになると驚きが感じられる。線を太くし、色を適宜変えると画面の変化が美しい。
  • 白い線でいったん描いた絵を消し、その上に新しい絵を描くようにすれば、1枚の絵でも絵の変化を表現できる。
  • リピータが2組いたのは、このワークショップが単に与えられたパズルを解くようなものではなく、自己表現を主体にしたもので、次はあれを試してみようといった、工夫ができる魅力があるからだろう。
  • 海外の人でも問題なく参加できていた。完成した作品をスマホで撮影して持ち帰っていた。これは作業が簡単で、かつ、魅力があることを示している。
  • 文部科学省の「小学校学習指導要領」にはプログラミング学習が「コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身につけるための学習活動」とあるが、ブロック言語を覚えるのが難しい低学年には、このような方法が適しているのではないかと感じる。

キッズプラザ大阪「1コマアニメーションワークショップ」日曜日、レポート

キッズプラザ大阪、コンピュータ工房で、1/25から3/31まで、「へ・ん・し・んアニメーション」というタイトルで、PEAS motch! を使った1コマアニメーションを作成するワークショップを行っている。土日祝日は、1回40分の入れ替え制で、平日は自由入場となっている。ここでは、ワークショップが始まった日曜日の様子をレポートする。

ようこそキッズプラザ大阪へ 〜遊んで学べるこどものための博物館〜

 

1コマアニメーションとは

1コマアニメーションでワークショップの機材を説明すると

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ワークショップ時間、人数

  • 1回40分、定員10名
    10:30~11:10/11:20~12:00/1:15~1:55/2:05~2:45/2:55~3:35
  • 指導員1名、ボランティアスタッフ1名
  • 参加者(1回目6名、2回目8名、3回目子供4名大人4名、4回目7名、5回目9名、幼稚園から小学校低学年)

ワークショップの内容

  1. 名前(ニックネーム  作品の区別に使用)、年齢、男女をソフトキーボードで入力。ペンタブレットの使い方の練習も兼ねている。ひらがな・英語キーボードが切り替えできる。英語キーボードに中国語の表記あり。(5分)
  2. ペンで自由に書く。色の替え方、太さの替え方を教える。(2分)

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    PEAS motch!の使い方
  3. 鉛筆ボタンを押せば、書いた順番にアニメになることを教える(3分)
  4. 練習制作(5分)
  5. みんなの作品を見てみよう(2分)。ペンタブレットのボタンに「上書き保存」が割り当ててあり、黄色いシールが張り付けられている。このボタンを押すとサーバー(教師用PC)にデータが保存される。保存されたフォルダを、プレーヤー「9View」にドラッグすれば、全員の作品が上映される。このアニメをみて、くすくすと笑いが起これば成功。
  6. 自由制作(15分)
  7. できた人から作品上映(残りの時間)

感想

  • 今回のワークショップでは、幼稚園児でも、絵を描く段階にすすむと、操作につまずく子供は一人もいなかった。昨年実施したアニメ制作ワークショップでは、図形選択や変形作業ができない子供たちが多く、ボランティアスタッフのサポートが必要だったが、今回はみな絵を描くのに熱中していた。
  • 自分の描いた絵が動くとなると、より楽しさが増す。完成したアニメーションを連続上映すると、静止画を順番に見るよりはるかに迫力がある。
  • 書き順アニメの線のスピードの自動生成について、単純な線はゆっくり動き、塗りつぶす線は高速に動くようになっており、テンポよいアニメーションができていた。ただ、点を打つ速さがはやすぎるように感じた。線の長さが0なので時間が0になっているようだ。

プログラミング学習との関係

  • プログラミング学習として利用するには、アニメーションの順番を考えて作成したストーリー性のある作品がでてくればよいと思ったが、実際にはどうだったか。1回目は絵を書いたら動いたのでおもしろかったといった程度でプログラミングとの関連はあまり見えなかった。2回目は、会場から大笑いがおこっていた。建物など、大きなものが順番にできあがっていき、最後におもしろい絵が描かれるというパターンが、笑いをさそうようであった。3回目は、みなストーリーのある作品を作っていた。年齢をたずねると小学校3年生とのこと。1コマの絵をつかって十分ストーリー性のあるアニメーションが作れることがわかった。4回目、5回目とも個性ある1コマアニメーションが作られていた。
  • 上の図面2枚「PEAS motch!」で作成した。Windowsペンタブレットで指入力した線を、あとからマウスで修正。おおまかな線入力は指でできるが、細かい修正はマウスが便利。この作業はプログラムのデバッグと同じでコンピュータを道具として使いこなす力を習得できる。アニメGIF出力して、レポートにはりつけたが、PowerPointの資料作成にも使えそうである。

 

データ保存と上映の仕組みがすばらしい

  • 今回、生徒全員のデータの保存、収集、上映の流れが非常にスムーズだった点は特筆に値する。データ保存は生徒がタブレットの黄色いボタンを押すだけである。このボタンに「Ctrl+S 上書き保存」が割り当てられており、それだけで生徒の作品が教師用PCのフォルダに振り分けられて自動的に保存されていた。従来こういった作業は、ファイル開くから、保存先フォルダを指定する操作が必要で、ボランティアスタッフのサポートが必要な場合が多いが、その操作が一切不要になっていた。
  • その仕組みを述べると、(1)生徒用PCの  PEAS motch! の設定ファイル setpath.ini に保存先(教師用PC共有サーバーのアドレス)が記入されている。
  • (2)setpath.ini ファイルには保存時刻によって、保存先フォルダ名が記入されており、この設定により、ワークショップごとに、別のフォルダにふりわけて保存される。
  • (3)最初に名前、年齢、男女の入力から初める。この段階でファイル名が作成される。そのため、あとは「上書き保存」だけでよい。
  • (4)生徒用PCの各プログラム「peasmotch.exe」は、「peasmotch-01.exe」「peasmotch-02.exe」...のようにリネームされている。このEXE名の後ろの番号が保存ファイル名の先頭につけられる。それによって、どのPCから保存されたものか、教師側でわかるようになっている。
  • 作業をはじめると、保存フォルダの中に「_とちゅう」という自動バックアップファイルができる。これは上書き保存すると削除されるので「_とちゅう」というファイルがある人は、まだ保存がすんでいないということがわかる。

再生プログラム「9view-full」

  • 「PEAS motch!」には、アニメを再生するプログラム「9view-full」が付属している。このプレーヤーに保存フォルダをドラッグするとその中のアニメをファイル名の順番に再生する。「_とちゅう」という自動バックアップファイルは読み飛ばす機能がついている。
  • 「9view-full」でアニメーションを再生中に、データを編集することができる。ペンタブレットの保存ボタンを適宜押すことによって、上映中の作品がどんどん更新されていく。

 

アプリ改善アイデア

  • コントロールパネルのボタンに「プレイ」「もどす」「アニメ」の説明があるとわかりやすいという意見があった。

キッズプラザ大阪の「書き順アニメ(1コマアニメーション)ワークショップ」

1月25日から、キッズプラザ大阪のコンピュータ工房で、幼稚園から小学校低学年向けに「書き順アニメ(1コマアニメーション)」を作るワークショップを行なっている。

ようこそキッズプラザ大阪へ 〜遊んで学べるこどものための博物館〜

 

 

使っているソフトは、「PEAS motsh!」という 9VAEきゅうべえを改良したソフトだ。

http://peasmotch.jpn.org

1週間たったので、その経過とプログラミング学習との関連について感想など紹介したい。

 

ワークショップの内容

  • 対象:4歳以上  
  • 機材:Windowsパソコン+ワコムペンタブレット 10セット
  • ソフト:「PEAS motch!」
  • 内容:書き順アニメーションを作る
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  • 「PEAS motch!」は今回のワークショップ用に開発したソフトで、絵を描くだけで書き順アニメーションができる。

 

小学校低学年の子供達に教えることは相当難しい。

 

当初、アニメ作成方法を、1。絵を描く、2。アニメ作成ボタンを押す

の2ステップにした。アニメ作成ボタンだけで、誰でもできると考えた。ところが、複数ページ作成できるようにすると、各ページで、アニメ作成ボタンを押し忘れる子供達が続出した。

 

(対策)アニメ作成ボタンを押し忘れても、自動的にアニメになるようにした。

 

(教訓)

  • 小学校3年生ぐらいになると、最初の説明でちゃんと理解できるが、小学校1年生程度だと、ある作業に熱中すると、自分の知らなかったことは忘れてしまいがちである。
  • たった一つのボタンを覚えるのに時間がかかるという状態なら、ブロックを使ったプログラミング学習でも、相当手間がかかるのではと予想する。
  • 昨年9VAeを利用したワークショップでは、サンプルの顔を読み込むところから始めた。この場合、よくわからずに適当に操作していると、意識せずに顔の形を変形したり、移動したりすることになり、それが面白いので、繰り返しているうちに、仕組みがわかってくる、という手法を用いた。
  • 今回は、絵を描くことは問題ないが、「アニメ作成」ボタンは新しいことなので、何回も忘れてしまう。ソフト側で押し忘れに対処することにした。

 

絵の書き方と「書き順アニメ」の自動生成

  • 書き順アニメは、絵を描く順番が再生の順番になるという簡単なルールを子供達に与える。
  • このルールを利用すれば、ストーリーを持ったアニメを作ることができる。
  • 書いた順番に再生させるのは簡単に見えるが、どういうスピードで再生するかは結構調整が難しい。
  • 線の長さに対応した時間を割り当てるだけでは塗りつぶしを行なっている線に一番長い時間を割り当ててしまい、絵が止まったようになってしまう。

(対策)

  • 単なる線と、塗りつぶしの線は速度を変える必要がある。
  • このためには子供達描いたデータを集めて、速度調整ルールを開発する必要がある。今回キッズプラザ大阪の5日間の実施で、260個のデータが得られた。そのデータを元に時間割り当てプログラムを調整した。
  • f:id:dnjiro:20180129232542g:plain←調整前 

    f:id:dnjiro:20180129232750g:plain←調整後

(教訓)

  • 「書き順アニメ」は原理は単純だが、ノウハウが必要である。キッズプラザ大阪で実施しながら改良する手法は大変有意義である。

 

プログラミング学習との関係

  • 書き順アニメーションは、描く順番に物事が起こっていくので、言語もブロックも使わずに手順を記述することができる。
  • 描いた絵は後から自由に修正できる。絵がアニメを作成するプログラムであると考えれば、デバッグ作業を体験できる。「PEAS motch!」は、最も簡単なプログラミング開発環境と言える。
  • 「PEAS motch!」画面。白紙に絵を書き、鉛筆ボタンを押せば書き順アニメができる。左側の矢印をタッチすれば、選択モードになり、書いた線の属性(色、太さ、種類、形など・・)を変更できる(デバッグ作業)。

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